概要
ワイルド・ゲス
難易度 | |
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インパクト |
現象
観客が自由に選んだカードをデックに戻した後、マジシャンはデックから裏向きのまま適当に5枚のカードを取り出し、
「この中にあなたが選んだカードがある」と宣言します。
1枚づつ表を見ていくと、5枚のうち4枚が観客のカードになっています。1枚は他のカード(クイーン)です。
全てのカードを裏向きに戻し、「1枚だけ仲間外れのカードがありましたね、それがあなたが選んだカードです」
と言って改めて5枚を表向きにすると、4枚あったの観客のカードが全てクイーンに変わり、1枚だけクイーンだったはずのカードは観客の選んだカードに変わってしまいます。
マジックの特徴
- カードが一瞬で変化するビジュアルのインパクト
- レギュラーデックで演じることが可能
- 一部難易度の高い技法あり
実演
- 実演
マジシャン 後藤俊介
クラシカルなカードマジックを得意とする若手マジシャン。
「Magic Masters Open ジュニア部門」準優勝「MAGI -PARA」優勝など数々の賞を受賞。
「オードリーさん、ぜひ会って欲しい人がいるんです。」「DTテレビ」などバラエティー番組にも多数出演し、注目を集めている。
1組デックの中に、観客の選んだカードが4枚現れ、それらが一瞬で4枚のクイーンに変化するなどビジュアル的なインパクトの強いカードマジックです。
仕掛けのないカードを用いて、簡単な事前準備のみで演じることが可能です。
一方でミスディレクションをかけながらの技法が重要な場面で使われており、初心者の方が習得するには十分な練習が必要になります。
解説
解説動画
事前準備
このマジックで使うテクニック
準備するもの
-
- 特になし
トップに4枚のクイーンをセットしておきます。クイーン以外の数字でも演じることは可能ですが、見栄えの良い絵札を使用することをおすすめします。
また、デックの真ん中あたりに絵札がないこと確認しておくとより良いです。観客の選んだカードが絵札だった場合、現象が起きたときの見た目上のインパクトが弱まる可能性があるためです。 (こちらの確認は行わなくても手順自体には影響がありませんが、可能であれば行うことをおすすめします。)
演技
カードを広げ、観客に1枚好きなカードを選び、覚えてもらいます。(解説ではクラブの4が選ばれています)。
観客がこのカードを覚えてる間に、さりげなく半分ぐらいのところでスイングカットを行います。デックの上半分を左手に渡します。
左手のトップに観客のカードを返してもらいます。元々トップには4枚のクイーンがあるので、その上に観客のカードが重なる形です。
(↑パケットのトップから4枚はクイーンになっており、その上にカードを返してもらいます)
左手のカードの上に、右手のカードをドリブルします。このときドリブルしたボトムカード(=観客のカードの上に落ちるカード)が、インジョグされた状態になるようにします。すなわちドリブルの位置を調整し、マジシャンから見て手前側にカードがデックから突き出た状態になるようにします。
(↑観客のカードの上のカードが突き出た状態になっています)
インジョグしたカードを親指で持ち上げてブレイクを作ります。
ここからダブルカットコントロールを行い、観客のカードと4枚のクイーンの計5枚のカードをトップにコントロールします。
テクニック
解説ではダブルカットコントロールを行っていますが、観客のカードとその下の4枚のクイーンの位置関係を崩さずにトップにコントロールする方法であれば、他の方法で行っても問題ありません。
続けて、観客のカードを(再び)観客に選ばせるフォースの手順を行います。ここではドリブルフォースを用いる手順を解説しています。
デックをオーバーハンドシャッフルのポジションで持ちます。
まず上から3分の2ぐらいを左手に取ります。
次のカードをインジョグします。
インジョグしたカードの上に残りのカードをシャッフルしていきます。
シャッフルし終わったらインジョグしたカードを親指で持ち上げて、このカードの下にブレイクを作ります。
このブレイクを利用してドリブルフォースを行います。観客がストップというタイミングに合わせてブレイクから下のカードを落とします。
テクニック
また、ドリブルフォースの代わりにリフルフォースを行うこともできます。
テクニック
観客に選ばれたカードから5枚のカードをテーブル上に配っていきます。必ず順番が逆になるように注意します。テーブル上のカードはボトムに観客のカード、上4枚がクイーンになっています。
5枚のカードを手に取りますが、このとき一番上のカードを手に取って、カードを使ってテーブル上のカードをすくい取るようにして、さり気なく順番を入れ替えます。忘れがちな手順なので注意して行ってください。
(↑この手順によって観客のカードが上から4枚目にある状態になります)
「これから1枚ずつカードをお見せします。もし万が一お客様のカードが出てきたとしても、あるいは逆になかったとしても、声や表情に出さないように注意してください」と観客に向かって言います。
上記のセリフを言い終わったら、一番下のカードをバックルまたはプルダウンで押し下げてブレイクを作ります。
ブレイクから上の4枚を1枚であるかのようにめくり、観客のカードを示します。
もう一度4枚を1枚のごとくめくって裏向きに戻し、トップカード1枚だけテーブル上に置きます。
もう一度同じことをします。すなわちボトムカードを引き下げてトリプルリフトを行い、観客のカードを示して元に戻し、トップから1枚をテーブルに置きます。
3枚目も同じ要領でダブルリフトを行い、観客のカードを示してトップカードをテーブルに置きます。
4枚目のカードは普通に1枚取ってめくり、テーブル上に置きます。
残りの1枚のカードは左手の上で表に返し、観客に示します。
カードを裏向きに戻します。
ここからカードを全て表にしていくクライマックスの手順になります。
「今5枚のカードをお見せしましたが、1枚だけ仲間外れのカードがあったはずです。そのカードがズバリお客様の選んだカードです」というようなセリフを言います。観客は最後に見せた左手の上のクイーンが仲間はずれだと思い、マジシャンが失敗したと考えるはずです。
これをミスディレクションとして、メキシカンターンオーバーを行います。
テクニック
マジシャンから見て一番右のカード(観客のカード)の左端のあたりを左手人差し指で軽く押さえ、右縁を少しだけ浮かせます。
右手のクイーンを使って、観客のカードを下からすくい取りながら、ひそかにカードを入れ替え、同時にカードを表向きにめくります。これがメキシカンターンオーバーです(詳細は上述の解説記事をご覧ください。)。
残りのカードも順番に、1枚目と同じテンポを維持しながらめくっていきます。
「このように5枚のカードのうち4枚のカードがクイーンです。1枚だけ仲間外れのこのカードがお客様のカードです」というようなセリフを言って、ゆっくりと右手のカードをめくります。間違いなく観客のカードが的中したことを示してこのマジックを終わります。
ワイルド・ゲスのポイント
ドリブルフォースで失敗しないために
ドリブルフォースはフォースの中では比較的簡単な技法ですが、技法そのものとしては簡単なものではないため、相応の練習が必要です。
詳細な手順やコツは下記の解説記事をご覧いただけるとわかりやすいと思います。
その中でもコツを1つだけあげるとすると、それは「観客をよく観察すること」です。
観客がいつストップと言うかを見極め、それに合わせてこちらがドリブルオフの速度を調整する必要があります。
4枚のカードを観客に示す前に
4枚の観客のカード(実際はうち3枚はクイーン)を観客に1枚ずつ見せていく際に、「これから1枚ずつカードをお見せします。もし万が一お客様のカードが出てきたとしても、あるいは逆になかったとしても、声や表情に出さないように注意してください」というセリフがあります。
ここではかなり強調して言っておく必要があることに注意してください。そうでないと、セリフの直後早速1枚目に観客のカードが出てくるので、その瞬間に観客が「自分の選んだカードだ」と思わず言ってしまうことが少なからず発生するからです。
このセリフは若干くどいぐらいに念押ししておく方がより安全でしょう。
メキシカンターンオーバーのコツ
メキシカンターンオーバーはカードで別のカードすくい上げるという珍しい動きの中で行うことになります。
単体で行うと当然、観客に違和感を与えたり、手に持っている方のカードは何なのだろうといった疑問を抱かせることになるため、本来は利用する場面が難しい技法になります。
このマジックでは、メキシカンターンオーバーを行った直後に、全く同じ動作をする機会が3回ありますので、できるだけ同じ動き同じテンポになるように練習し、違和感を薄めるようにしましょう。
またメキシカンターンオーバーに入る前のセリフや動きを工夫し、ミスディレクションをきかせることも当然有効です。
まとめ
仕掛けのないデックを用いながら、観客のカードが4枚現れ、それがクイーンに一瞬で変わるという、インパクト抜群のカードマジック「ワイルド・ゲス」を解説しました。
不思議なことが目の前で起こっているのに観客は反応してはいけない、という演出も面白いマジックになります。
他のマジックに広く応用の効く「ドリブルフォース」も使用するマジックですので、是非練習してレパートリーのひとつにしてみてはいかがでしょうか。